令和2年度:地域・多世代連帯で家庭内スタック問題をストックレスで解決するリユース・ドライブの開発

[株式会社応用芸術研究所 令和2年12月10日取材]

 応用芸術研究所(代表 片木孝治さん)は、家庭内に眠る不要なものを、必要としている人に使ってもらうリユースの仕組みをこれまで様々な形で試行して来ました。2019年度は、「地域・多世代連帯で家庭内ストック問題をストックレスで解決するリユースモデルの開発」を手がけました。具体的には、京都市内大学生と京都市内地域住民間で、学生の欲しいものを地域の人から提供してもらう仕組みを作り、松陽地区と出町商店街で実践しました。この取組をさらに定着させることを目標に応用芸術研究所のメンバーは今年度も活動を続けています。

譲って欲しい人側から発信するリユースモデルをさらに普遍的に

 2019年度にトライアルとして実施したリユースモデルでは、
①学生側が欲しい物リストを作成
→②地域の人に声かけ 
→③地域の人が品物を提供 
→④LINE上に物品を写真で出品・マッチング 
→⑤マッチング成立品を拠点に集めて引き渡し
→⑥学生によるお礼メッセージの送信、
という流れでした。学生による欲しいものリストを見てからの出品なので、フリマなど品物を準備する手間も減らせます。さらに、必要なものだけをやりとりするので、これまで問題になっていた「引き取り手のない品物」の量は減るはずです。ただ、昨年度の取り組みでは、欲しいものリストに載っていない家庭内不用品を一緒に届ける地域の人もあったため、最後は少し「引き取り手のない品物」が残る結果となりました。しかし、地域の家庭内で眠っていた品々が、学生生活の必要品として有効利用され、当初の企画通りの取組で終えることができました。
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 2020年度の目標としては、
1)このリユースシステムを、京都市内の他の地区でも展開すること、
2)既にこのモデルを経験した松陽地区では、松陽地域ごみ減量推進会議(朝倉里野会長、メンバー約11名。以下 松陽ごみ減)のメンバー独自でこのモデルを実践できる仕組みにすること、の2点です。

徒歩圏ネットワーク作りのための連携地域の模索地域

 まず、家庭内ストック品を提供してもらう側として、松陽ごみ減に続き協力してくれる地域を探すべく、応用芸術研究所のメンバーは様々な市内の団体へこのリユースモデルについての説明会と協力要請を行なった結果、左京区、伏見区、北区、上京区、右京区などいくつかの地域でも実施できる可能性が開けてきました。
そして、学生の協力についても同時に京都大学など市内の大学との連携を考えてきました。しかし、コロナ感染症の影響で4月からの大学の授業がほとんどオンライン授業になり、寮や下宿を予定していた学生が転入してこなかったことなどから、なかなか大学生側の協力体制を整えることができないまま12月を迎えています。

松陽ごみ減ではL I N Eアプリ講習会を開催

 もう一つの課題は、地域の人が地域の大学生とつながりやすくするため、今回の運営形態に地域の人にさらに慣れ親しんでもらうことです。松陽ごみ減メンバーには、昨年度にこの取り組みのモデルケースとして活動してもらったので、今年度は次のステップへ進んでもらおうと、片木さんは考えました。そこで、12月10日(木)に、応用芸術研究所と松陽ごみ減の合同会議を開きました。まずは、今年度のリユースモデルの実践についての打ち合わせです。秋学期以降大学の授業が再開し学生さんたちも一部戻ってきているので、年度末に向けて家庭内ストック品を引き渡しするための段取りなど打ち合わせをしました。
そして、今回の会合でのもう一つの議題が、上記で紹介したプロセスの④LINE上に物品を写真で出品・マッチング ⑤マッチング成立品を拠点に集めて引き渡す、この2つの作業を松陽ごみ減メンバーで実践してもらえるようにすることです。昨年は応用芸術研究所の学生メンバーが提供できる品物写真をL I N Eグループに掲載し、マッチングの管理も行っていましたが、今年はその作業を地域で担ってもらうべく、松陽ごみ減メンバーにL I N Eでの写真掲載操作に慣れてもらうための「L I N Eアプリ操作講習会」も併せてこの日に開きました。
まず、専用のL I N Eグループを作り、そのL I N Eグループに写真をアップしたり、コメントを書いたり、写真を削除したりなどの操作方法を大学生メンバーが丁寧に説明していました。ストックレスのリユースモデルを進めるためには、写真で掲載した品物に整理番号を付けたり、マッチングが済んだらその品物にマッチング成約済のラベルを付けたりする必要があります。それらの操作方法なども松陽ごみ減メンバーに覚えてもらいたいと片木さんは考え、その技術を伝えるため1月21日(木)には第2回目のL I N E講習会を行うことも決まりました。その会議で、L I N Eグループの運営ルールなども話し合う予定です。
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また、昨年度は松陽地域の不用品も応用芸術研究所の事務所がある出町枡形商店街「DEまち」で引き渡しになったものもあり、車で松陽ごみ減まで品物を取りにいく必要がありました。なので、今年度は、京都大学桂キャンパスや京都市立芸術大学など松陽地区に近い地域にある大学との連携し、徒歩や自転車で受け渡しができる様にできれば!と片木さんは意気込みます。
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(写真:L I N E講習会の様子)

ものを受け渡しするだけでなく「お醤油を隣に借りにいく」ような身近な関係作りも視野に

 12月10日の打ち合わせには、昨年度運営に関わった大学生メンバーの林さん(立命館大学大学院1年生)と亀岡さん(同志社大学4年生)も同席されました。松陽ごみ減メンバーも2人の学生さんとは久しぶりの再会となり、会議自体も大変和んだものになりました。L I N E操作の手ほどきも、この2人の大学生が先生になり、様々な新しい操作について説明します。手ほどきを受ける松陽ごみ減メンバーも「わあ、うまくできた。」、「こんな機能、知らんかったわ。」と楽しそうにL I N E操作を覚えておられました。
今後の情報共有も今回新しく作られたL I N Eグループで行われることになりました。松陽ごみ減メンバーと応用芸術研究所メンバーの距離もこれでますます近くなることでしょうし、このL I N Eグループで実際に不用品を渡す側ともらう側のコミュニュケーションが始まっていく事でしょう。

 2月・3月は京都の大学生が移動する時期に入ります。コロナ禍では、活動を継続する事自体難しい状況ですが、1歩でも2歩でもこの取り組みが前進することに期待したいです。

[当事業アドバイザー 西澤浩美]

ごみ減のサイト

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