令和2年度:あらためて電池について考える

[蛍光管リサイクル協会 令和2年11月20日取材]

 蛍光管リサイクル協会は、これまで事業所を対象に回収を行ってきた蛍光管に加え、 回収時に「電池も回収してもらえないか」との要望があることから、電池のリサイクルについて調査し、将来のリサイクルシステム構築を考えています。様々な領域の専門家からの情報を集め、乾電池の廃棄処理の現状や課題について整理するため、公開研究会を11月20日(金)に登録会館で開催しました。今回はその様子を紹介します。
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乾電池廃棄処理にかかる2つの課題が浮き彫りに

 この公開研究会では、4人の専門家が講演・報告を行いました。まず、最初に京都大学地球大学院地球環境学堂 浅利美鈴准教授が「廃電池問題、いま問われること」と言うタイトルで基調講演を行いました。日本人の電池使用量の過去50年ほどの推移をまとめ、その中でリチウムイオン電池など新しい形態の電池使用量が増加していると報告。その廃電池の約70%が埋め立てられています。ヨーロッパなどでは電池も資源としてリサイクルされており、2035年までにはリサイクル率を85%にするという目標を立てている国々がある状況に対して、日本ではまだ埋め立てが主流で再資源化が進んでいないので、今後はリサイクル推進にも日本は力を入れていく必要があるとのことでした。また、近年リチウムイオン電池の発火事故が増加していることにも触れ、廃電池の適正処理の必要性を訴えました。
 コンシューマーズ京都の溝内啓介事務局長は、実際の自治体のごみの回収方法の情報発信事例をいくつか挙げて、各自治体の廃電池の回収方法が統一されていないこと、市民に分かりやすく掲示されていないことを報告しました。
 消費生活相談員の森順美さんは、バッテリー製品事故の実態として、携帯電話などで使用されているリチウム電池の発火事故の報告件数が消費生活相談でも近年増加していると報告。製品事故の実例としては携帯電話の発火事故、目覚まし時計の電池の発熱などを写真や動画で紹介しました。発火事故の動画は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)によって制作されたもので、発火のしくみについて分かりやすく解説されていました。森さんの報告によると、NITEに通知された製品事故情報で、リチウムイオン二次電池搭載製品の事故は、2014年は98件だったのが、2019年には231件になり、6年間で合計982件にのぼるそうです。
 最後の報告者である日本容器包装リサイクル協会の清水健太郎さんからは、「電池由来の発火事故の現状と課題」というタイトルで報告があり、清水氏もリチウム電池発火事故の増加や電子たばこなど。今回最後に登壇した清水氏が電池業界ではなく、日本容器包装リサイクル協会の職員であることは、少し不思議に感じました。しかし、これは現在の日本の廃棄物分別・回収方法に深く関係していることが分かりました。というのも、プラスチック容器包装の回収現場で多くの電池など有害廃棄物が混入し、再性処理事業者で発煙・発火事故が多く起こっているそうです。そのため、日本容器包装リサイクル協会でも電池の正しい廃棄方法を徹底して知らせるための啓発活動を展開するため、パンフレットやチラシを作成して注意喚起を行っているそうです。また、製造者責任として生産メーカーが責任をもって回収システムを作るように要望なども出しているとのことでした。  
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今後の電池の適正処理を考えよう

 これまで電池の適正処理は「水銀問題」と捉えられ、「水銀ゼロ使用」の方向性が示されたことで、基本的な問題解決に向かってきました。その一方で、今回の研究会で取り上げられたように、ボタン電池、鉛蓄電池、リチウムイオン電池など様々な種類の電池が拡がる現在の状況で、これらの電池の廃棄課程で不適切な排出事例も見られるようになり、電池由来と思われる「発火事故」が起こってきています。 今回の4人の全ての報告者からも、今後のリチウムイオン電池などバッテリー発火事故の危険性について警笛が鳴らされました。今後の電池の廃棄の適正な排出法・処理法の周知が、まず徹底されなければならない重要な課題です。
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現状調査結果を冊子やHPで広く周知

 蛍光管リサイクル協会は、「あらためて電池について考える」活動を進めていく中で、様々な角度から使い終わった電池の行方を調査し問題点を浮き彫りにしました。そして、20日の研究会で研究会出席者とこの課題について情報共有をすることができました。協会の代表理事の原強氏によると、多くの人に電池にまつわる現状と課題について正しい知識を身につけてもらうために、今後は冊子を作成したり、協会のHP上に正しい情報を掲載したりすることで啓発活動に繋げたいとのことでした。

[当事業アドバイザー 西澤浩美]

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