令和元年度 地域と大学生 ストックレスで解決するリユースモデルの開発

京都市内大学生と市内地域住民をマッチング

応用芸術研究所(代表 片木孝治さん)は、今年度のリユースモデルとして、京都市内大学生と市内地域住民をマッチングさせ、学生の欲しいものを地域の人から提供してもらう仕組み作り、「地域・多世代連帯で家庭内ストック問題をストックレスで解決するリユースモデルの開発」を手がけました。松陽地域ごみ減量推進会議がこの取組に賛同し、家庭に眠る不要品(家庭内ストック品)を大学生たちに提供しました。この取組の詳細を探るべく、家庭内ストック品を引き取りに向かう応用芸術研究所代表片木さんと4人の大学生メンバーとともに、3月25日に松陽地区に車で向かいました。さて、この取組み、具体的にはどのように動いているのでしょうか。
応用芸術研究所の参画メンバー

発想の転換、譲って欲しい人側から発信するリユースモデル

家庭内ストック品をごみに出すのではなく再利用させるための方法としては、フリーマーケット(以後 フリマ)やガレージセールに出店して貰い手を探す方法、メルカリなどアプリやインターネットを利用して貰い手を探す方法などがあります。しかし、これらの従来の方法は、どれも不要になったものを処分する側からのアプローチです。応用芸術研究所のメンバーは、逆ベクトルの発想で今回のユースモデルを考えました。つまり、手放したい人側の仕組みではなく、譲って欲しい人側にたった仕組み「家庭内ストックをストックレスで解決するリユースモデル」です。

応用芸術研究所による家庭内ストックのリユース促進取組は実は今回で3年目です。1年目は、高齢者宅家庭内ストック品の実情調査と、フリマ形式モデル、2年目は、地域(出町桝形商店街)と連携したガレージセール(エコお宝発見市)や、一般向けにメルカリアプリ講習会によるネット利用リユースモデルを試行しました。どちらもある程度成功裏に終わったのですが、水平展開をするには課題も見えて来ました。

例えば、フリマは、不要品を出す側の論理で出店するので、売れ残りが出てきます。個人で取組む場合はまだよいのですが、団体で寄付品を集めて出店する場合は、売れ残った品々の処分に困ることになります。メルカリなどのアプリ利用は、フリマ的なごみ問題は起こりません。ただ、郵送料が高くついたり、品物を送る手間が結構かかったりして負担に感じる場合もあり、これもハードルが高かったようです。

そこで、3年目に考えたのが今回のリユースモデルです。具体的には、①学生側がほしい物リストを作成→ ②地域の人に声かけ →③地域の人が品物を提供 →④LINE上に物品を写真で出品・マッチング →⑤マッチング成立品を拠点に集めて引き渡し→⑥学生によるお礼メッセージの送信、という流れで行います。欲しいものリストによる出品なので、これまで問題になっていた「売れ残り」は出ずストックレスでいけるはずです。
さらに、譲る側と譲られる側を広く一般公募にするのではなく、京都の地の利を活かし、大学生をサポートするリユースモデルに特化して取組むことにしました。 
大学生に参加してもらうため、京都産業大学の寮生と応用芸術研究所の他のプロジェクトに参加する大学生に協力を呼びかけました。

たとえば、京都産業大学は1年生時のみ入れる寮がありますが、2年目以降はそれぞれが下宿先を探すことになっています。そこで、2年目以降の学生が下宿に必要なものを揃えられないかと片木さんは考えたのです。そして、譲る側は、京都市内各地区の地域ごみ減量推進会議や、これまでの活動ですでに協力を得ている出町枡形商店街との連携を想定しました。
LINEでのやりとり
引き渡し所文

学生の欲しいものリストで家庭からリユース品が続々

まず、学生側の欲しいものリスト作りには、京都産業大学の寮生や複数の市内大学に通う学生の協力を得ることができました。そして、大学生がどのような家庭品を必要としているのか調査を行った後、「学生の欲しいものリスト」を完成させました。譲る側は、松陽地域ごみ減量推進会議と出町枡形商店街が手を挙げました。
学生欲しいものリストとチラシ

いざ、松陽学区へ

松陽地区ごみ減量推進会議(代表 朝倉里野さん、メンバー11名程 以下 松陽地区ごみ減)は、今回の取組に協力することに決めましたが、新しい取組なので松陽地区住民全体に声をかけるのではなく、まずは、松陽地区ごみ減メンバーの家庭内ストックを提供することにしました。「学生の欲しいものリスト」をメンバーに配布し、家庭に眠る不要品を地域の公民館に集め、応用芸術研究所のメンバーに引き渡すことにしました。3月25日も譲渡品引き渡し日だったので、応用芸術研究所の参画メンバーが松陽地区ごみ減の皆さんを訪ねたのです。この日は松陽地区ごみ減の定例会でもあったので、意見交換会も併せて実施されました。

松陽地区ごみ減代表の朝倉さんは、「どんなものを出せば良いか最初は少し不安もあったが、学生さんの助けになると分かり、やってよかったと思っています。 また、若い人たちと話す機会もでき嬉しいです。」と話し、次年度以降の取組についても前向きであった。別のメンバーは「家電製品を出すとき、どのくらい古いものでも出していいのかがちょっと不安だった。譲ったもので火災などの事故があっても怖いしね。」と出品基準について不安であるという意見も出されました。さらに、「今回のように物品をいつも取りに来てくれるといいけれど、いつもこうはいかないよね。」との意見も。

譲渡品の引き渡し所のある出町枡形商店街「DEまち」と松陽地区は車で行き来しないと家庭内ストック品を運べない距離にあります。「本来なら、徒歩や自転車くらいで行ける距離の範囲内で、個々に品物の受け渡しができるのが理想だ」と片木さんは語ります。運搬頻度、引き渡し方法については今後も考えていかなければならない課題です。
意見交換会の様子
画像の説明文

ものを渡すだけでなくコミュニュケーションや達成感が生まれる場に

一方、大学生側の反応も概ね好評で、参画メンバーは楽しそうに活動に参加しています。25日に参加した大学生の仁尾さん(京都工芸繊維大学)は、以前にすでに松陽地区から譲り受けたイアリングを着けて現れました。会場にはそのイアリングを手放したごみ減メンバーの方も同席しており、イアリングが繋いだ縁で二人の会話は弾んでいました。また当日ごみ減代表の朝倉さんが持ってきた黒いコートも譲ってもらい、仁尾さんはとても嬉しそうでした。他にも、社会福祉協議会会長の木崎さんも会場に来られ、ネクタイを持参されました。別の大学生の林さん(立命館大学)がその場で使いたいと宣言。「現在ネクタイが1本しかないので、とても助かります。」と、林さんは木崎さんに直接お礼を言うことができました。
画像の説明文

会場にいたごみ減メンバーと大学生が顔を合わせて話をしているうちに、他にも譲ってもらえる品物があることが分かり、芋づる式に譲渡品が見つかっていきました。直接顔を合わせる話すことで益々譲る側と譲って貰う側の関係が近くなっていくように感じました。
大学生メンバーの亀岡さん(同志社大学)は、会場に並べられた不要品の写真をすぐに携帯で撮り、出店番号を添えて即LINEグループのアルバムに掲載します。グループに登録した学生がアルバムを見て、「番号○○の品物が欲しいです。」と書き込むと、すぐにマッチングが成立していました。なんと現代的でフットワークの軽いリユース活動なんだろう、と感動すら覚えました。この時点ですでにアルバム上の出品数は100点を超えていて、取材後もさらにマッチングが成立しています。
そして、このしくみは、不要品を貰いっぱなしではなく、品物を譲ってもらった学生は引き渡しありがとうメッセージの写真をLINEに載せることで、一連の流れが完了します。LINE画面上でも譲られる側が分かるようになっています。譲渡品を受け取った学生のにこやかな笑顔を見ると、家庭内ストックを提供した地域の人も大学生の役に立ったという達成感が感じられることでしょう。
 
今回のリユースモデルは、最初の一歩を進めることができたと言えるでしょう。しかし、物品の引き渡し方法など課題も残ります。併せて補助金などに頼らないよう財政面の課題もクリアしていくことが必要です。これらの課題の解決策を見出し、持続可能なリユースモデルとして今後も地域でこのしくみが定着していくことを期待したいです。
画像の説明文

ごみ減のサイト

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