平成28年度:「体操服!いってらっしゃい,おかえりなさい」プロジェクト:その2
[平成29年3月21日取材]
「体操服、いってらっしゃい!」
3月21日(火)、卒業式を翌日に控えた御所南小学校に行ってきました。「体操服!いってらっしゃい、おかえりなさいプロジェクト」で児童から先生方に体操服を預けるセレモニーがあるとお聞きしたからです。前日までの春のような陽気とは打って変わって前夜からの雨が降りしきる日でした。
体育館へ行くと、6年生6クラスの児童が卒業式の最後の予行練習を終えたところでした。壁には紅白の幕、児童の後ろには保護者席、脇には来賓席、舞台下には卒業証書を入れる賞状盆・・と、明日の卒業式の準備万端という雰囲気です。トイレ休憩から戻ってきた子どもたちは、このプロジェクト主宰の岡部さんが席に着くと、まるで誰かが号令をかけたかのようにすっと静まりかえりました。6年生も卒業の頃になるとこんなにもしっかりしているのかと感心を通り越し、感動しました。
約2週間前の3月9日(木)に、45分の授業1コマを使って、岡部さんからこのプロジェクトの趣旨を説明されたそうです。体育の時間に着用する体操服は、ほとんどがポリエステル製で、石油を主な原料として製造していること。捨ててしまえばごみとなり燃やされるだけだけど、着なくなった体操服をリサイクルすれば、再び糸となり体操服となり、新品として誰かに使ってもらえること。誰かに譲るリユースも大切だけれど、それでも最後に着なくなった時点でリサイクルに回せば、何度でも生まれ変わることができるということ。このプロジェクトが始まったのは2010年の新1年生からで、それも御所南小学校が最初のモデル校だったこと、つまり日本で最初の体操服の循環が始まった学校であること、今回の6年生が新入生として入学した時点では2年目の取り組みだったこと、みんなは6年間リサイクル体操服を活用していたこと、などを伝えたそうです。
セレモニーの冒頭に校長先生からのご挨拶がありました。「卒業するみなさんからリサイクルのために体操服をお渡しするセレモニーです。みなさんが1年生から着ていた体操服は、ごみの量を減らすことができたし、CO2を減らすことができました。リサイクルというのは、リサイクルに出すだけでよいわけじゃありません。使い、循環させることが大切です。また、兄弟や近所の子に渡すのもとても大切です。この様にリユースすることも重要なことなので、今日、持ってきていない人も大丈夫ですよ。渡す人がいないな、渡すにはだいぶ傷んでいるなという場合はリサイクルしましょう。」といった内容のお話がありました。続いて、岡部さんからもお話がありました。「もう一度みなさんにお伝えしたいのは、物を大切にする心をずっと持ち続けてほしいということです。リサイクル、リユースをただ形式的にするのではなく、物を大切にする心でもってリサイクルがいいのか、リユースがいいのか判断していってください。そして、大人になるまでの間にいろんな出会いがあって、そこで、私の場合の体操服いってらっしゃいプロジェクトのように情熱を傾けるものが見つかると思います。そのときに、それを逃さないように出会いを大切にしてください。」といった内容のお話がありました。子どもたちはとても真剣に聞いていて、おふたりの話が伝わっているな、という感じがしました。
そして、いよいよ各クラスから代表の2名が担任の先生に体操服をお渡しする場面がきました。「代表の人から『体操服、いってらっしゃい!』をしましょう。感謝の思いをこめてお願いします。」と校長先生から声かけがあり、代表の子どもたちが「いってらっしゃい」と言うと、席に座っているみんなも自然と「いってらっしゃい」と続き、声が体育館に響きました。この時も子どもたちの主体性やそれぞれの意思を感じる瞬間でとても感動しました。
京都発 未来へ
校長先生のお話で、リサイクルでは使うことが大切、リユースかリサイクルか自分の状況に合わせてどちらでもいいんだよ、という点は、この場面でとても大切なエッセンスだと思いました。また、岡部さんのリサイクルやリユースを形式的、機械的にするのではなく、物を大切にする心を忘れずにという強調も、本当に大切なことだと思いました。
この体験をした子どもたちが将来どんな行動をする大人になるのか、後追いすることはできませんが、とても楽しみです。
岡部さんは卒業シーズンとあって大忙しで、御所南小学校でのセレモニーの直後に東京へと発たれました。東京でも「体操服!いってらっしゃい、おかえりなさいプロジェクト」が広がりを見せているとのこと。京都発の本取り組みが日本中に広がり、体操服のリサイクルが当たり前になる社会もそう遠い未来ではないと感じました。始まりはたった一人でも、情熱を傾けて自分の足で人に会いに行く、そこから大きなプロジェクトが発展するのだということを子どもたち同様、私も目の当たりにしました。