ごみ減活動レポート 企業向けごみ減量実践講座「捨てない廃棄物 廃棄物をコミュニケーションツールにする方法

平成27年3月4日,キャンパスプラザ京都にて,株式会社トータルメディア開発研究所 チーフプロデューサーの森岡武さんと株式会社ナカダイ常務取締役で,モノ:ファクトリー代表の中台澄之さんから,それぞれ廃棄物をアートに活用する取組についてお話いただき,その後,京都造形芸術大学名誉教授の水野哲雄さんをコーディネーターとして,ディスカッションを行いました。

廃棄物を教育に生かす『レミダ』と『驚くべき学びの世界展 京都』

講演風景1

森岡さんは,まちづくり,まち興しに関わってこられた経験をお持ちで,その際ご自身も参考にされた北イタリアのレッジョエミリアで行われている廃棄物を活用した教育「レミダ」についてご紹介いただきました。

レミダとは,会社や工場から出たB級品や廃棄物をストックして,こどもやアーティストなど市民の創作活動に提供する取組。この取組に参加している幼稚園では,廃棄物から生まれたさまざまな創作素材が充実しており,子どもたちが日常的に創作活動できる環境になっています。

幼稚園の様子を写真で見せていただくと,子どもたちが楽しそうに創作活動し,また教室のつくりもとても楽しい雰囲気です。組み立てるような素材だけでなく,お絵かき用の紙も企業から大量に出されたもの,幼稚園の図書も廃棄された中から再利用されたものがほとんど。また,教室の棚やイスなどもリユースされたものや,ビール箱のようなものも利用されており,またそれがアートな空間を作り出しています。「同じ形のものや,同じ色のものが大量にあると,こどもはもちろん、大人も興奮しますよね。『ものをつくることは,学ぶのではなく,おのずと湧き出てくる欲求。』そんな環境の中でこどもたちは創作し,またその作品はすべて記録にとるという作業が行われています。リサイクルを五感で感じることを大切にし,さらにワークショップ後に素材を元に戻せるよう,接着剤などを使用しない工作を心掛けているそうです。

気になるレミダの仕組みですが,各地の“センター”が中心に運営しており,無償で素材を提供してくれる排出事業者に声をかけ,協力事業所内に「レミダボックス」という箱を設置。排出事業者は,使えそうな廃棄物を普通のごみと分けてレミダボックスに入れ,市と収集事業者は共同プロジェクトという形をとるなどして,普通のごみの回収時にレミダボックスを回収します。集まった物はセンターにて仕分けします。一方,素材が欲しい人は,団体として会員になります。会員証の値段は一律ではなく,センターにより柔軟に対応されていて,幼稚園や学校など,いろいろな団体が活用しています。残念ながら日本ではまだこの仕組ができていませんが,世界各国でネットワークが広がってきています。「世界中をつなげ,持続可能な文化や過剰ではない文化を普及や実践,アイデアの形成や交流をし,その活動を支援すること」がネットワークの目的だといいます。

森岡さんは,2011年9月に京都でレミダの仕組みを取り入れたイベント『驚くべき学びの世界展』を開催し,大盛況でした。現在は,兵庫県川西市の国崎クリーンセンターをクリエイティブセンターにしようと活動を進めておられ,集まってきた廃棄物を利用した事業を展開しておられます。1000個ほどの小さなプラスチックの飲料容器の箱を見つけた子どもが,夢中になって箱をひっくり返し,そのうち眺めたりくっつけたり。そんな様子を見ていると「何が要るもので,何が要らないものか,勝手に決めない方がいい」そう思うようになったそうです。

レミダの運営や取組の様子,そして日本での取組についてもご紹介いただきました。お話を伺って,素材として提供したいな,又は素材として提供してほしいなと思われた方が,たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

『処理工場から生産工場へ』ナカダイの挑戦

講演風景2

ナカダイは群馬県前橋市にあるリサイクル率95%を誇る,産業廃棄物の処理業者。『廃棄物という手段を使って,多様な価値観と自由な発想で社会に貢献する。』ことを掲げ,事業を進めておられます。景気でモノの動きが激しく変わる廃棄物の世界で,日々,大量の廃棄物と向き合い,廃棄物の気持ちになったりモノの流れを深く考える中,2007年頃から「処理工場から生産工場へ」と大きく舵をきってこられました。

今は,通信販売で気軽に購入され返品された新品同然の商品が,安全が担保できないと判断され,廃棄物としての運命をたどることが多くあります。商品の信用の裏には,商品の無駄がたくさんあるということです。また,商品に旬があるように廃棄物にも旬があり,季節によって,地域によって,時代によって・・・ごみはその地域の産業や経済,文化を反映します。

廃棄物の廃棄の手段は,リユース,リサイクル,焼却,埋立の4つしかないのが現状ですが,中台さんは,要らなくなったものを必要なところへ回し,モノがつくられてから捨てられるまでの時間をいかに長くできるか,リユースとリサイクルの間の距離をいかに長くできるかを考え,その新たな選択肢“ものの流れとお金の使い方を変えること”を提案されています。「廃棄物処理費に2000万円払っている事業者さんに分別等のコンサルをして,費用を1800万円にするのは簡単ですが,そうではなく,分別を徹底して生まれた200万円をアーティストの活動資金として,またはアート展の協賛金として使いませんかと。そして実際,事業者から入ってくる大量の廃棄物は,事業者の了解を得て素材としてとことん分別し,地域に開放しておられます。

現在,前橋の本社敷地内と東京の品川に,素材のショールームを設け,販売をしたり,2015年で5回目となる『廃棄物を言訳にしないデザイン展』というアートイベントを開催し,廃棄物に触れる機会,廃棄物を考えモノの流れに関わる機会を提供されています。こういった目に見える取組で,廃棄物を出した事業者さんのお金も活かされ,廃棄物も活かされています。

最後に,「廃棄物は遠くに運ぶとコストが合わないから,関西でも同じ取組が広がると楽しいですよね。地域とのつながりが生まれ,廃棄物業界全体が,楽しくて親しみやすくなるといいな!と語ってくださいました。

最後に,森岡さんと中台さんに加え,京都造形芸術大学名誉教授の水野哲雄さんに入っていただき,ディスカッションと質疑応答が行われました。

講演風景3

「人間は物を作って,使って,そして捨てる。その中に「遊ぶ」というのが入る余地がもっとあればいいのかな」という水野さんの問いかけに,「普通の人はごみ箱に捨てたら終わりという感覚だが,私たちはごみ箱に入ってからもまたスタートです。丁寧に運んで保管するか,雨ざらしで野ざらしにするか。捨てたという行為から,埋められるまでの距離をいかに伸ばすかを考えます。その中に,もちろん「遊ぶ」「戯れる」また作る,学ぶなどもあると思います。」と中台さん。

参加者から「仕組みがあれば継続もしやすいと思いますが,仕組みをしっかりと作る上で,心掛けていることは?」という質問に対して,森岡さんから「目指すイメージを皆で共有すると,動きがイメージできる。人が介在する仕組みを考え,工夫をするとか,遊ぶなどのひと手間をかけるようにする」。中台さんから「食べ物と同じに考えてみる。ワークショップで,たくさんある素材をメインにして,料理を考えるように,楽しく使える提案をする。と,それぞれの活動から導き出された方法を御提案いただきました。

他に参加者からも活発に質問や相談があり,沢山の発見がある楽しい講演会でした。

講座小委員会

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