ごみ減活動レポート『ごみにまつわる映画祭』第3回

映画「365日のシンプルライフ(原題:Tavarataivas)」から見えてくる、ひととものの幸せな関係とは?

『ごみにまつわる映画祭』の最終回は、平成27年2月21日(土)、左京区にある安楽寺の客殿「MOMIJI/椛」にて行われました。今回上映された映画「365日のシンプルライフ」は、日本で平成26年に公開されたばかりの作品で、若い世代を中心に34名が参加されました。

映画の冒頭、26歳の主人公ペトリは、何もない自分の部屋を裸で飛び出し、雪の降り積もる真夜中のヘルシンキを駆け抜けます。着いた先は、巨大なトランクルーム。彼は、持ち物の全てをトランクルームに預け、「1日に1つだけ、必要なものを持ち帰る」というルールの下、自分にとって本当に必要なものを見極めるという、前代未聞の実験を始めたのでした。それまでの彼の生活は、ものに溢れ、楽しみもたくさんあるはずなのに心は空っぽ。その原因はいったい何なのか。彼は、壁にぶつかる度に大好きなおばあちゃんに相談に行き、胸の内を語ります。自分の生き方を見直す中で、「人生はものでできているのではない。持っているものの多さだけで、幸せははかれない」ことを学び、ものとの関係を再構築していきます。


今回の映画祭のゲストには、ミュージアムエデュケーションプランナーの大月ヒロ子さんをお迎えし、使われなくなったものに新たな価値と役割を与える「クリエイティブリユース」の面白さを教えて頂きました。大月さんは、クリエイティブリユースの活動拠点として、平成26年8月にIDEA R LAB(岡山県倉敷市)を立ち上げ、もの創りに関わる人たちが滞在しながら交流できる環境を整えています。この施設には、地域や家庭から出た廃材や使われなくなったものを素材として展示する「マテリアルライブラリー」も充実しており、若いアーティストの学習の場ともなっています。

ゲストトークには、NPO法人地球デザインスクール理事長の水野哲雄さんと、ひのでやエコライフ研究所の大関はるかさんにもご参加頂き、ものにまつわる楽しいや視点についてお話を伺いました。


水野さんからは、「今日の映画も大月さんの活動も、ものとどう付き合うのか、がテーマだと思います。大月さんは、一度役目を終えたものに手を加えて、かっこいいと思わせてくれる、その発想が本当に素晴らしいんです。」大月さんに、なぜ廃材をアート作品の素材として使うようになったのか伺ってみると、「私が生まれ育った倉敷市玉島では、昔からいろいろな製造業が暮らしと一体になって栄えていました。特に縫製業が盛んで、製品を切り取ったあとの端切れを扱う端切れ屋さんなどもあったんです。」大月さんは母親に連れられ、幼い頃から端切れを組み合わせ、新たなものを創る楽しさを自然に身に付けたと言います。大関さんからも「私の両親も家で全てのものを手作りしていました。そんな姿を見ていたので、ものを簡単に捨てない、もう一度使えないかと考える習慣が身に付いたのだと思います。」大月さんは、「多くの人は、ものを捨てることに、罪悪感やもったいないという気持ちがあると思うんです。」と仰り、皆で共有の倉庫を作り、そこに使わなくなったものを集めて、必要な人に必要なものを使ってもらえるシステムがあるといいですね、と提案されました。「今後、家族の遺品の処分に困ったり、空き家問題なども深刻になってきます。『共有のトランクルーム』があると、今よりもっと上手にものと付き合う暮らしが実現しますね。」と水野さんも深く共感されました。

海外では、家具や家電、家の解体で出た木材などを巨大な倉庫に保管・共有したり、誰でも参加できるフリーマーケットが盛んだったりと、一度使ったものの価値を理解し合い、賢く暮らしている例もあります。「日本は経済活動ばかりに価値が置かれていますが、手頃な値段で、ほどほどに良いものを手に入れられる社会が実現すると、みんなが豊かで幸せになれると思いますよ。」大月さんの言葉には、ものとうまく付き合うためのヒントが込められていました。

(松村 香代子)

ゲストの略歴

安楽寺

住蓮山安楽寺は、京都左京区鹿ヶ谷にあり、法然上人の弟子、住蓮上人と安楽上人を開基とするお寺。客殿「MOMIJI/椛」は、2010年に完成し、お寺の公開に合わせてカフェスペースとして開放している。

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