ごみ減活動レポート『ごみにまつわる映画祭』第1回

映画「もったいない!(原題:Taste the Waste)」を通して、食の在り方を考える

 一度も私たちの食卓に姿を見せることなく、農場や流通過程、小売店の裏側で人知れず捨てられていく食べ物たち。食品を「ごみ」として扱う私たちに対し警鐘を鳴らしたドキュメンタリー映画が、平成27年1月23日(金)に新風館1階のパタゴニア京都店にて上映されました。この映画の原題は『Taste the Waste』。「ごみを味わおう」というショッキングな題名には、まだ食べられる物が捨てられているという現実と、もう一度ごみの正体が何かを考えて欲しいという、バレンティン・トゥルン監督からのメッセージが読み取れます。この日の参加者は45名。20代〜40代の若い世代が多く、映画祭への関心の高さが伺えます。

映画では、トゥルン監督がオーストリア・フランス・ドイツなどのEU諸国やアメリカ、日本、カメルーンなどを巡り、大量の食料資源を搾取しながらその3〜5割を廃棄する人々と、搾取され続ける人々の憤りについても描かれていました。


映画の上映後には、ゲストとしてお招きした帝京大学准教授の渡辺浩平さんと、ひのでやエコライフ研究所の鈴木靖文さんへの質問時間が設けられました。実は、お二人はこの映画の制作に関わっておられ、大学時代は同じ研究室の先輩・後輩という間柄。学生時代のエピソードも交えながら和やかなトークとなりました。

 参加者からは、「日本では、食品リサイクルによって家畜の飼料化が認められているが、EUではなぜ認められていないのか?」という質問がありました。これに対して、渡辺さんは「ヨーロッパでは、BSE(牛海綿状脳症)や口蹄疫など、家畜の飼料によって広がったと考えられる伝染病で深刻な被害が出たため、厳しい措置が取られている」旨の説明がありました。映画の中では、この措置により年間500万tもの穀物を新たに生産しなくてはならない、と法規制による課題も浮き彫りにしています。日本国内では、食品リサイクルによる飼料化については厳格な検査基準が設けられているため、限られた施設でしか実施できていないとの報告もされました。


また、映画の別のシーンでは、賞味期限の6日前になるとヨーグルトを廃棄する決まりがあり、常に新しい商品を置き、消費者のニーズに答えている、というフランスのある大規模スーパーが紹介されていました。これに対し、参加者からは「日本では賞味期限が近付いた商品を割引して販売する努力をしている」など、非常に「もったいない!」という意見が寄せられましたが、一方で、ゲストのお二人からは「日本では、食品への異物混入に対し非常に敏感です。異物が発見された商品のみならず、同じロットで作られた商品を回収対象とし、廃棄処分するという対応は、ヨーロッパでは余り見られません」と、思わずはっとさせられる指摘もありました。

最後に、渡辺さんからは「生産国の実状を知り、生産者の声を知ることで、消費者の価値観も変わるのではないか」と今回の映画上映の意義に触れた上で、「東京での例ですが、学生たちがスーパーなどの見切り品(通常は廃棄される食品)で炊き出しを行うなど、流通や販売店を巻き込んだ活動が広がっています」。また、鈴木さんからは、「この映画を通して、単に余った食品はリサイクルすれば良いのではなく、生産に関わるエネルギーや労働力が全て無駄になるということを知って欲しい」。更に、「賞味期限に振り回されることなく、自身の五感を最大限に活用し、美味しく安全に食べ物を頂くという意識を持って欲しい」との意見がありました。

 参加者からは、「食べ物は私にとっての基本。以前から問題意識はあったが、この映画を観て、広い視野を持って情報を得て、発信していくことの大切さを改めて感じました。とても刺激になりました」などの声を頂きました。

(松村 香代子)

ゲストの略歴

パタゴニア京都店

住所:京都市烏丸姉小路下ル 新風館1階

☆今回、映画祭の会場となったパタゴニア社は、衣料リサイクルの先駆けとしても実績があり、パタゴニア京都店では、過去にもフェアトレードに関する映画上映にも協力されるなど、消費者と企業が環境や暮らしの在り方について真剣に意見交換ができる場を提供しています。

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