ごみにまつわるこの数字なぁに? 3Rの「R」は増やすのがいいの?絞るのがいいの?

3Rの「R」は増やすのがいいの?絞るのがいいの?

会報誌表紙企画「ごみにまつわるこの数字なぁに?」第15回目の数字は「3Rの“R”は増やすのがいいの?絞るのがいいの?」です。どんな違いがあるのでしょうか?

ごみ減量の基本的な考えとして、「3R」はよく知られるようになりました。言うまでもなく、「Reduce=リデュース」「Reuse=リユース」「Recycle=リサイクル」の3つのRの頭文字を取ったもので、それぞれ「ごみの発生抑制」、「繰り返し再使用」、「資源としての再生利用」などを指します。
この「3R」に、Repair (修理する)、Remake(作り直す)Refuse(ごみになるものをもらわない)、Rental(借りる)など、様々な「R」を追加し、5Rや7R、8Rを掲げる自治体や市民団体(R拡大派)があります。一方、リデュースとリユースに重点を絞り込む「2R派」もあります。
「R拡大派」と「2R派」、2つの方向があります。それぞれ考え方が違うので「どちらが正しい」というものではありませんが、「なぜ増やすのか」「なぜ絞るのか」といった、それぞれの考えについて、おさえておく必要があると思います。

2R派の面々
インターネットで「ごみ減量2R」と検索すると、京都市、名古屋市、大阪市、神戸市、鎌倉市、品川区など多くの自治体や団体の取組が出てきます。
そのなかで京都市の場合、2015年10月に改定した「しまつのこころ条例」で、「2Rの促進」を「改正のポイント」の1つにあげるなど、条例で2Rの推進を位置づけています※。
また、京都市ごみ減量推進会議でも「2R型エコタウン構築事業実行委員会」を設け、「2R」を事業の重要な柱として位置づけています(委員長・京都大学大学院地球環境学堂浅利美鈴准教授)。

なぜ「2R」に絞るの
「2R」に重点を置く自治体や団体は、なぜリサイクル以外の2Rに重視しようとするのでしょうか。それを考えるのに、3Rそれぞれが、誰に、何を求めたものか、考えましょう。
初めのR(Reduce)=リデュースを推進しようとすると、市民に対して、限られたモノで豊かに暮らす工夫や、モノを大切に長く使うライフスタイルの普及など、暮らし方への働きかけが必要になります。一方、企業に対しても、耐久性があり流行に左右されないモノづくりや、修理の仕組みの整備などを求める必要があります。
次のR(Reuse)=リユースには、不用品をフリーマーケットやバザーに出したり、知り合いに譲るなど、市民個々の努力も含みますが、使用後も繰り返し再使用可能な容器の採用や回収の仕組みづくりなど、企業の事業活動への働きかけも必要です。また再使用可能な製品を支持する市民を増やすための働きかけも必要です。
3番目のR(Recycle=リサイクル)は、リサイクルの仕組みが整備された後、主な課題は、市民の資源ごみ分別の徹底になります。

3Rのなかでも、2Rとリサイクルでは大きな違いあり
2R(リデュースとリユース)を実現しようとすると、市民に対してライフスタイルの転換を求めるだけでなく、企業に対しても、モノづくりや売り方の変革を求める必要があります。2Rが「上流対策」と呼ばれるのはこのためです。
一方、リサイクルは、現在の大量生産、大量消費がそのままでも推進することができます。例をあげると、1980〜1990年代の空き缶リサイクルや1990年代後半からのペットボトルリサイクルの場合、「消費の増加をリサイクルが追いかける」という状況が続きました。
2Rとリサイクルは、「3R」とひとくくりにされますが、働きかける対象や、求める内容などに大きな違いがあります。
人々の暮らし方や価値観、企業活動への働きかけが必要な2Rの事業は、簡単に成果が出るものではなく,時には企業の事業活動との利害対立もあります。とはいえ、ごみを元から減らしていくことに取り組まないと、ごみ減量活動は「大量に出るごみの後始末」になりかねません。すべての自治体や団体が同じ考えだとは言えませんが、2Rを重視する自治体や団体には、このような思いがあります。

京都市ごみ減のリサイクル事業と2R事業
京都市ごみ減量推進会議では、「秘密書類リサイクル」や学校給食の牛乳パックリサイクルでできたトイレットペーパーの開発と販売、廃食油の回収など、様々なリサイクル事業に取り組んでいます。一方、「リサイクルは最終手段」と位置づけ、前述のように2Rの推進・実現に力を入れています。
2R事業を例示すると、京都市内の修理屋さんの情報を集めた「もっぺんサイト」やフリーマーケットの開催、「リーフ茶の普及で、ペットボトル減らそうキャンペーン」などを推進しています。過去にはリユースびん商品の普及キャンペーンの実施やリユースびん回収拠点マップの作成、スーパーと協働した容器包装減らそうキャンペーンなどを実施しました。また、市内で取り組まれている2R事業(祇園祭ごみゼロ大作戦やおむつなし育児など)への助成金支援も行ってきました。
このように、必要なリサイクル事業に取り組みつつ、2Rを重視した事業を実践してきました。

Rの拡大は「市民にできる取組メニューの紹介」が目的
一方、「R」を増やしていく自治体や市民団体もあります。先に「考え方が違う」と書きましたが、何が違うのでしょうか。
もちろん全てとは言いませんが、5R、7R、8Rと、「R」を増やしていく自治体や市民団体の多くが、「市民にできる取組メニュー」として、頭文字にRが付く行動を紹介していると考えられます。
5Rを標榜するある自治体のウェブサイト(ホームページ)を見ても、「私たちひとりひとりの意識と行動が、社会を変える原動力となります。今日から5Rを実行して、環境にやさしい生活をはじめましょう。」との記述に続き、5つのRの実践例が記されています。例示内容はあくまで「市民の行動」です。他の自治体等のウェブサイトを見ても、同じような記述を見つけることができます。

Rを多く並べるほど優れているわけではない
「2R派」と「R拡大派」では、向いている方向が違います。もちろん「全てではない」という但し書きは付けますが、前者(2R派)は、企業の事業活動への働きかけなど、いわゆる「上流対策」も含めた事業を進めるため、2Rに重点を絞り込んでいます。一方、後者(R拡大派)は、「市民への取組メニューの紹介」として、頭文字にRが付く行動を並べて提案・提唱しています。「選択肢の例示」であるため、いきおいRの数は多くなっていきます。
もちろん、地域事情が違うのでどちらが正しいとは言えません。ただ、少なくとも「Rを多く並べた方が優れている」わけでないことは明らかです。

Rを並べて、呼びかけるだけでは広まらない
「R」を多く並べようと思えば、まだまだ増やすことができます。Wikipediaで「3R」を検索すると、3Rの他に16の「R」が例示されていました。これ以外にもまだ「R」はありますので、20R以上掲げることができそうです。
それら1つ1つのRが間違っているわけではありませんが、リペアやリメイク、リフューズなど、パンフレットやウェブサイトに数多くのRを並べても、「呼びかけるだけ」では,市民や事業者に広めることはできません。これは「2R派」についても言えます。「リデュース、リユースが重要」と書いて示すだけでは実効性などありません。言うまでもなく、市民や地元企業が、それぞれの「R」に取り組みやすい環境整備や情報提供、参加可能な事業や仕組みづくりが必要です。

たくさんのRを同列に並べるのは「基本理念と手法の混在」
先に、京都市ごみ減量推進会議は「2Rを重視している」と紹介しました。「2Rに絞り込み、重視している」と言っても、リペアやリメイク、リフューズに取り組んでいないのではありません。ここまでに紹介したように様々な活動を展開し,リペアやリメイク、リフューズの普及にも取り組んでいます。ただ、それらは、リデュース(そもそもごみをつくらない)を実現するための「手法」と位置づけています。
冒頭、3R(Reduce=リデュース、Reuse=リユース、Recycle=リサイクル)を、「ごみ減量の基本的な考え方」と紹介しました。いわば大分類であり,基本理念も含んでいます。リペア、リメイク、リフューズなどは,「手法」であり,位置づけると中分類や小分類といえます。
京都市ごみ減量推進会議は,「R」をたくさん並べるのではなく,重点を明らかにし,上流対策も含めて,具体的な取組を推進していきます。(了)

※ 京都市WEBサイト「ごみ半減をめざす「しまつのこころ条例」について」
http://kyoto-kogomi.net/about2r/

3Rの「R」は増やすのがいいの?絞るのがいいの?

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