ごみ減活動レポート 企業向けごみ減量実践講座「工場・事業所 うちの分別,こうしてます!聞いてなるほど!事例集」

開催概要

今回の講座では,「工場・事業所 うちの分別,こうしてます!聞いてなるほど!事例集」と題して,京都に縁のある企業に,それぞれの事業所で発生する廃棄物の分別や,社員等への周知方法について事例を発表いただいた。一口に分別といっても,企業ごとに排出される廃棄物の種類は千差万別である。そのうえで,どのように社員等に周知をしていくかは,廃棄物担当者の悩みの種でもある。今回,それぞれに情熱を持って取り組んでおられる様子がひしひしと伝わってきた。

開催日時

平成27年10月27日(火)14:00~16:20

開催場所

京都市消費生活総合センター・研修室

事例発表者

日新電気株式会社

(生産技術部設備・環境グループ テクニカルエキスパート/主査 浦野新一 氏)

講演する浦野新一 氏

日新電機は,100年近い歴史をもつコンデンサ事業(変圧器)等,一般消費者からは普段見えない大きな電気設備の製造を行っている。以前から,廃棄物削減に取り組んでおり,リサイクルできない廃棄物の削減―最終埋立地へ持っていくものを減らすゼロエミッションをめざしている。京都市の「ごみ減量・3R活動優良事業所」にも認定されている。

まずは発生源を押さえることから

ごみを減らすためには,まず発生源を押さえることが大事である。その考えから,各部署から排出されるごみ量を計測し,その種別とともに管理するシステムを構築した。このことで,ごみ量の多い部署や種別に対し,重点的に対策を練り3Rを進めている。その結果,京都市のクリーンセンターで処理する事業系一般廃棄物は,なんと「茶殻・タバコ吸殻のみ」となっている。
社内でいかに分別を正しく行ってもらうかについても徹底している。「これはどう分別すればいいのかわからへん」という社員の質問に答えるため,あいうえお順に検索できるよう分別一覧表を各職場に貼っている。

効率的で異物混入を防ぐ機密書類リサイクル

機密情報の保護と古紙リサイクルを進めるため,機密書類リサイクルにも取り組んでいる。ただ機密書類はリサイクルにコストがかかる。機密書類でない書類は一般の古紙リサイクルに回せば良いが,どうしても機密書類に混じりやすい。また,各部署で機密書類リサイクルの箱を封印するため,誤ってフロッピーディスクなどの異物混入があっても確認ができない。このことから,各部署で封印を行うことができる人を決めて教育を行い,テストを実施。きちんと理解した者に社内資格を認め,異物や機密書類処理に回る一般の古紙が無用に増えないよう取り組んでいる。

電子ファイルの管理方法を周知し,紙の発生抑制

ペーパーレス化はまだ余地があり,更なる削減に向けて努力しているとのことだが,紙が増える原因を「電子ファイルの取り扱いの悪さ」であると分析。社内のPCなどの管理を行う他部署と連携し,フォルダやファイル名の付け方の秘訣などをまとめた手順を作成。これを周知することで,プリントする紙の抑制につなげている。

自社製品がごみになることも考える

自社製品は環境配慮設計をして,省資源,長寿命,再資源化,処分容易化を目指している。環境問題だけを考えるのではなく,社員一人ひとりの自主性を大切にして,CSR(企業の社会的責任)のこともみんなひっくるめて取り組んでいかねばならないと思っている。

ごみや環境の面での課題は「本業の課題」

電子ファイルの管理方法の話などは,まさにそうであるが,ごみや環境の面で課題があるということは,本業,すなわち仕事の面でも何かしら問題が起こっていることだと考えている。環境対応は,本業の改善につながると考え,取り組んでいる。

学校法人大和学園 京都栄養医療専門学校

(管理部 部長 内ヶ島良明 氏の事例報告)

講演する内ヶ島良明 氏

学校法人大和学園はその前身である料理学校を1931年に創立,学園の中で,栄養士の専門教育を行う京都栄養士専門学校を1974年に開校し,現在の京都栄養医療専門学校となった。管理栄養士・栄養士・医療事務の資格取得を目指す学生を700人あまり有する。京都市の「ごみ減量・3R活動優良事業所」にも認定されている。

調理実習から出る生ごみ

カリキュラム上,必要な調理実習からも生ごみが多く発生する。そこで,学内では3キリ運動(水キリ,使いキリ,食べキリ)を実行し,ごみ分別の徹底を授業の中で指導している。あわせて,学生の意識向上のため「エコポスターコンテスト」を実施。優秀作には副賞として旅行券が当たるため,徐々に応募も増え,優秀な作品も多い。

学生の昼食からでる弁当容器を廃プラとして処理

 多くの事業所で悩みの種なのが,弁当などのプラスチック容器。京都栄養医療専門学校では,学生などが学内に持ち込む弁当容器が1日に50~100食ほどになる。廃棄物処理法上は,廃プラとして産業廃棄物となるが,元々食べものが入っているため汚れており,食べ残しなども混じり,処理が難しい。一般の事業所であれば,社員に対し食べ残しの除去や,容器をサッと洗うなどの指示を行うことも可能だが,学生は必ずしも指示に従うものでもない。そこで,清掃作業者と協力し,これらを洗浄し,廃プラとして排出できるようにしている。

オフィスからでる雑がみを教職員とともに分別へ

 これまでオフィスからでるごみは特に分別をせずに廃棄していたが,古紙類の分別徹底のため,雑がみの分別に取り組み始めた。
教職員のオフィスに,雑がみとその他のごみとが投入できるごみ箱を設置。それぞれのデスクから出たごみをこのごみ箱の前で分別し,古紙リサイクルにつとめている。

今後の課題は,シュレッダーごみのリサイクル,生ごみの活用,学生と教職員の意識向上である。

有限会社本杉工機

(環境管理責任者 本杉和美 氏)

有限会社本杉工機の会社案内パンフレットには,「3R+1R 私たちはモーターを作る会社ではありません。“勿体ない“を合言葉に修理を行う会社です。設備を修理し,使い捨てから,再生利用のお手伝いをする集団です。」とある。
鉄道車両モーターのメンテナンス,コイルの巻きかえ等のメンテナンスから始め,産業用モーターメンテナンス事業にも進出。社員25人の小さな会社だが,KES(KES・環境マネジメントシステム・スタンダード)取得を契機に積極的にごみ減量に取り組んでいる。

講演する本杉和美 氏

廃棄物搬出のタイミングを年数回から月1回に

2010年には,年間6トン弱の廃棄物を排出しており,それほど多い量ではないため,搬出は「溜まったら出す」という状況で,年に数回であった。このことで,毎月どの程度廃棄物が出ているのか認識しづらかった面がある。そこで,2011年から毎月排出するように変更。このことで毎月の廃棄物量が把握できるようになり,例えばごみ量が増えたり,分別がうまくいっていないなど,問題への対応が迅速になった。
あわせて,分別を細分化。インクカートリッジやペットボトルキャップは寄付するなどし,リサイクル率をあげていった。
これらの取組で,2011年には,年間4トン弱と,前年比約1.8トンの減量に成功した。

3S活動(整理整頓)や,対外的なPRで意識改革

社員の意識改革をさらに進めるために,KESの取組のなかで,電気使用量の削減や清掃活動なども行ってきたが,あともう一歩の努力が必要と感じ,KES取得から3年目に3S活動(整理整頓)にも取り組むことに。工場で使用する工具も,フックに掛け整理整頓するうちに傷みが少なくなり,無駄をなくす工場へと改革を行っていった。
より社員の自発的な行動を促していくために,対外的に「環境に取り組む会社」であることをPR。社外の方が執筆したコラムを掲載した3R瓦版を毎月発行。取引先の会社見学も多く,見学された方が,社員に「今月の3R瓦版読みましたよ。」と声をかけられることも。そのことで社員も自主的に3R瓦版を読むようになり,それにともなって社内の環境問題への意識も高くなってきた。

参加者交流会

事例発表後,参加者交流会を開催し,事例発表者と参加者の交流の場を設けた。参加者からは次のような自社の様々な取組や悩みなども話され,非常に有意義な場となった。

参加者からの声

参加者交流会の様子
開催報告者より
一般市民会員としては,普段はなかなか顔を合わすことのない,事業者の方々と意見交換ができよかった。事業者同士も,そして行政の方からも意義深い講座だったとの感想を聞くことができました。
今回事例発表いただいた企業のみなさまには,活動に拍手を送り,今後もがんばってほしいと思います。 事例報告を聞き,私たち市民もより意識を高く持ち,楽しく活動を続けて行きたいと思わせられました。
私の好きな言葉も,マータイ女史の「もったいない」なのです!
(講座小委員会委員:日本環境保護国際交流会(JEE)細木京子)

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